【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない
「気安く呼ぶな。榛名ちゃん教室に戻ろうか」





「過保護だな。そんなに心配ならあの時依乃里から離れなければあんな風にはならなかった思うけど。あの時どこにいたんだ?」





私も気になっていた。先輩は私が倒れる前、どこにいたんだろう。






「別にいいだろ。お前には関係ない」






「はぁ。やっぱりお前には依乃里のそばにいる資格はない」






「どういう意味だ?」





不穏な空気が漂い始め、依乃里の不安がつもる。






「女の子を大事に出来ない男は依乃里を任せることが出来ないって意味だ。これからは俺が彼女のそばにいる。俺はあんたみたいに大事な人を置いてけぼりなんかしない…!」






昴先輩は理由もなしに居なくなったりしない。





あの時だってきっと理由があってその場にいなかっただけで……。





チラッと昴の方を見るとその表情は曇ってた。





ずっと握っていた依乃里の手を振りほどいて昴は呟いた。





「…勝手にしろ」





どうして反論しないの?!違うって言ってよ!





この手だってお互い離さないって約束したばかりなのに……。






「昴先輩待って…!」






昴は一度も振り向くことなく廊下を去っていった。






簡単に離れないでよ。私の気持ちはどうなるのよ。
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