甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
【後継者は、前途多難】
私、佐々倉結羽(ささくら ゆう)24歳は、お父さんの経営する外食チェーン「佐々倉フーズ」の1人娘。
今は、本社にある管理部で働いている。

元々は、お爺ちゃんが食堂を経営していて、お父さんの代には給食、企業の昼食の委託事業を始め、今では福祉施設が中心となっている。
経営は決して上向きでなく、自宅への宅配サービスも視野に入れ、働く人達や高齢者向けサービスを手がける案も進めている。
お爺ちゃんが食堂を経営している時、近くの会社にお弁当を宅配していた。
それをお父さんは、時代の背景と試行錯誤して、そこから会社を大きくしてきた。
そんなお父さんは、従業員ファーストを心がけ、苦しい時期を乗り越えてきたから、人望は厚かった。

私は1人娘。
大切に育ててくれたことには、とても感謝している。
大学は、必ず自宅から、通学できる所と言われ、いずれは会社を継いで欲しいと、アルバイトは、お母さんの事務手続きを手伝った。

就職は、絶対、他の企業に行く!
そう決めてたのに。
後を継ぐんだから、直ぐにでも佐々倉のことを覚えるようにと、結局、お父さんの会社に入社する事になった。
もう、学生じゃないし、自活出来るから、お父さんの言う事ばかり聞いている人生は嫌だった。
大学卒業後、1年間は両親と一緒に住んでいたけど、箱入り同然に育ったから、会社でも一緒だと、自由が利かず窮屈だった。
『1人暮らし出来ないなら、会社を辞める!』
そう言い放って、荷物をまとめて、しばらくホテル住まいを始めた。
そして、お母さんに説得されたお父さんが折れて、ようやく1人暮らしを始めることが出来た。

やっと自由になれた!
そう思っていたけど、仕事と家の往復で、休日は家でゆっくりするか、買い物をするくらいになっていた。
「結羽、せっかく1人暮らし始めたし、そろそろ彼氏でもどぉ?」
何度か、友達に紹介された男性とは、その時は楽しいと思っても、心動かされる人に出会わなかった。
「結羽が恋に落ちる王子様は、いつ現れるのやら…」
友達がため息交じりで嘆いていた。
私の方が嘆きたいよ。
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