甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
どうしようかと思いながらも、あの夜の出来事が、取り消せるはずもない。
湊さんが来社する時は、休むか関わらないようにしなければ。
そう考えながら廊下を歩いていると、急に腕を引っ張られ、来客室に引き込まれ、閉まったドアに抑え込まれた。
「結羽、どうして知らないふりしたの?」
目の前にいたのは、湊さんだった。
「ひ、人違いじゃないですか」
私が顔を逸らすと、顎に手を当てて顔を振り向かせ、目と目が合った。
「あんなに愛し合ったのに、間違うわけないだろ?」
やっぱり逃れられない。
「す、すみません。まさか西条HDの専務とは知らずに、お酒の勢いであんなお願いを…」
湊さんは、私のメガネをそっと外した。
「あの夜のことは忘れないよ。それに忘れさせない」
逃げ場所がない私は、そのまま唇を奪われた。
私は胸を押して突き放したけど、腕を掴まれて動けなくなった。
「ダメですよ、人が来ますから」
「そうかもね」
また唇を奪われ、舌を絡み取られると、ダメだと分かっていても、気持ちに逆らえず、湊さんを受け入れていた。
「あの夜、俺のこと、身体に刻み込んで良かったよ」
もう1度顔が近づいた時、ドアがノックされた。
「西条さん、失礼します」
木島さんの声だ。
ドアノブが回って、ドアが少し開きそうになったのを、湊さんがドアを抑えながら、
「すみません、今大事な電話をしていまして、10分くらい待っていただけますか。直ぐに伺います」
「分かりました。では、会議室でお待ちしています」
ドアが閉まり、相手の声が木島さんだったことに、私の顔が曇った。
湊さんも、私の様子に気が付いたみたいだった。
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