甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
「木島さん、結婚を約束している彼女がいるって。私と結婚しなくても、佐々倉フーズには変わりなく尽くすから、その事を社長に伝えるからって」
「えっ?」
湊さんは目を見開いて、私の方を見た。
「そう、そうだったんだ…俺はてっきり、告白されたとばかり思ってたから」
そう言いながら、私を引き寄せ、抱きしめた。
「ごめんね。こんな気持ちになること、今まで無かったから、コントロール出来なくて」
「湊さん…」
その言葉、少し自惚れてもいいですか。
「結羽は俺が初めてだった。それだけに縛られてるんじゃないかと思ってたんだ」
そう、好きでもない人との結婚という鎖が、私の心を縛り、そのお陰で湊さんと出逢った。
そして、その鎖は外れ、ようやく解き放たれた。
ほっとした途端、湊さんの肩越しに、目に入った時計の針が指していたのは…
わぁ、もう終電ギリギリの時間だ。
「あっ、もうこんな時間、私帰りますね」
「明日休みだし、泊っていきなよ」
「でも、着替えもないですし」
「俺の服貸すから。もう遅いからお風呂入っておいで」
お、お風呂!
好きな人の家に来てお風呂…
恋愛小説の世界が、自分の時間に流れ込むなんて、夢みたい。

お風呂から上がると、湊さんはもう自分の部屋のベッドで、本を読んでいた。
「ありがとうございます。私、こっちのソファ借りますね」
「何言ってるの?ここだよ」
湊さんの隣の所をポンポンと手で叩き、私を招いてくれた。
ホテルとはまた違って、緊張するよぉ。
「は、はい」
「久々に我が家でゆっくり寝れるよ」
本を閉じた湊さんは、横になっていた。
「結羽が横にいるなんて、安心してゆっくり寝れるよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
軽く額にキスをした湊さんは、電気が消えると私の手を握り、目を瞑った。
湊さんの家のベッドに一緒に寝ている。
湊さんの香りだ…
私もほっとして、自然と瞼が閉じた。

「……ゆ……ゆう…結羽」
うとうとし始めた時、呼ばれた気がして、うっすら目を開けた。
「結羽」
「…は…い…」
「今日は優しくできないから、我慢しようと思ってたけど、やっぱり無理だわ」
貪るような口づけは、唇から首筋、胸元へ移動し、指先が私を確かめるように這う。
思わず声が漏れた。
「結羽のそんな声、初めて聞けた。もっと聞かせて」
湊さんと繋がる度に、私は愛し合うことの喜びを知る。
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