甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
【取り戻せない過去の愛】
プロジェクト企画もほぼ固まりつつあり、湊さんと一緒に過ごす時間も増えてきた。
家のドアを開けると、湊さんが料理を作っている。
「湊さん、いつの間に?」
「今日は早く帰って来たからね。先にお風呂に入ってきたら?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
湊さんと知り合ってから、こんな日が来るなんて想像も出来なかった。
お風呂から上がると、すっかり料理はテーブルに並べられていた。
「う~ん、いつ食べても美味しいです」
「美味しそうに食べるね。こっちまで幸せになるよ」
「だって、本当に美味しいから」
私の食べる姿を、優しく微笑んで見ていた。

食事が終わり、片付けが終わって2人で座っていると、何だか空気がさっきとは違う。
湊さんは思い詰めたような顔で、話し始めた。
「ねぇ、結羽。明日親父に、2人が付き合ってること、報告に行こうか」
「えっ!ゴ、ゴホッ…」
「だ、大丈夫?」
私は、突然の言葉に、飲んでいたお水で、喉を詰まらせてしまった。
「ごめん、突然なんだけど、多分親父、俺達が付き合ってること、気が付いていると思う。やたら高山さんに俺の補助をさせたり、外出に同行をさせたりすることが増えた。嫌な予感がするんだ」
美人でモデルのような容姿、そして教養高く、優秀な高山さん。
西条社長の言ってた社長夫人に、最も相応しい女性だ。
お父さんが言ってた困難って、こういうことか…
「結羽、俺を信じて」
「でも…」
「大丈夫。必ず2人の事を認めさせるから」
湊さんは私の不安を拭うように、微笑んだ。
どうしよう、やっぱり怖い。
その後、湊さんと愛し合っている間も、明日のことが、頭から離れない。
もしかして、この幸せな時間は、もう直ぐ終わりを告げるのかも。
そう思うと、涙が溢れそうになった。

翌日、私達は社長室を訪れた。
「何だ、話って」
「もう、分かってるんだろ?」
湊さんと私は、社長と対面している。
私は、社長を直視出来ず、2人のやり取りをただ聞くだけだった。
「じゃあ、率直に言おう。2人が付き合うのは勝手だが、結婚するとなると話は別だからな。それが分かった上なら、好きにしろ」
「別ってどういうことですか。俺が付き合いたいのも結婚したいのも、結羽ただ1人だけだ」
け、結婚!突然の言葉にビクッとして、叫びそうになったけど、ぐっと我慢した。
「お前は自分の立場が分かってるのか?例えば…佐々倉さん、君は、何カ国語、話せるんだ」
「あの、日常会話の英語を少しだけです」
「高山くんは、5か国語、話せるよ」
私は言葉が出なかった。
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