甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
【新たな旅立ち ~湊】
結羽と出逢うまでは、女性を本気で愛するということを知らなかった。
心奪われるような女性と出逢うことも無く、このまま1人で生きていくのもいいと思っていた。
でも、そんな俺に突然女神が現れた。

あの日、桜吹雪が舞う中、まるで妖精のように美しく、そして今にも泣き出しそうな結羽に、感情が揺れ動いた。
俺が初めてだった結羽。
あんなに愛おしいと想いながら、女性を抱いたのは初めてだった。
それからの俺は、日に日に結羽に惹かれ、溺れていった。
そう、それは今も変らない。
結羽無しの人生は、考える事ができない。

「結羽、今からあの出逢った時のホテルに来てくれる?」
「はい、丁度買い物に行くところだったので、そっちに向かいますね」
「俺もまだ会社だから、先にあの桜の木の下で待ってて」

あれから1年。
桜の木の下で、結羽は佇んでいた。
桜の花びらが舞い、手のひらに乗せて微笑んでいる姿は、1年前よりも更に美しく、女性らしさが増していた。
「結羽」
「湊さん」
結羽が駆け寄って来る。
「ここで、結羽を見かけた時は、泣き出しそうだったけど、今日は笑顔で、更に綺麗だよ」
「湊さんのお陰です」
俺の前であんなに乱れる姿を見せても、顔を赤らめて恥ずかしがる結羽は愛おしい。
「結羽、ここで君に一目惚れした。だから、ここで誓いたいんだ」
桜の花びらを乗せた結羽の左手を取り、薬指に指輪をはめた。
「これからは西条結羽として、俺の傍でずっと支えて欲しい」
「…はいっ」
頬を伝う結羽の涙を見て、胸が熱くなった。
「絶対に幸せにするから」
桜吹雪の舞う中、俺は結羽を抱きしめた。
「湊さん」
「んっ?」
「出逢った夜、あんな無茶な私のお願いを聞いてくれて、ありがとうございます」
俺は、結羽の目を見つめて答えた。
「きっと結羽がお願いしてなくても、俺は結羽を追いかけていたよ」
結羽の潤んだ瞳に見つめられ、艶やかな唇に吸い寄せられるように口づけをした。
桜が舞う中の結羽の笑顔は、今までで一番綺麗だった。
この笑顔をずっと見ていたい。
必ず、俺の傍でずっと笑顔でいられるように、最愛を注ぐ。
俺は、心に誓った。
< 62 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop