再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
海岸を後にして、私の家の最寄り駅に着く頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。


「ごめんね、遅くまで連れ回して」

「ううん、お父さんには遅くなるって言ってあるから大丈夫だよ。楽しんで来てって送り出してくれたよ」

申し訳なさそうな悠くんに、私は安心させるように笑みを浮かべた。


これは本当だ。

彼氏が出来たことも報告したら、お父さんから特に反対する様子は見られなかった。

気恥しいけど、私なりに真面目なお付き合いをしていきたいから隠しごとは極力したくない。


「響は大事な一人娘であることに変わらないでしょう? 俺、悪い彼氏だって思われないか心配だよ」


悠くんが、悪い彼氏……? 全然、結びつかない。

思わず目を丸くさせてしまう。


「悠くんが悪い彼氏なら、世の中の彼氏は悪い人だらけだよ」

「ふふ、過大評価だって」


自信のない私でも、悠くんに大事にされていると実感している。

悠くんは非の打ち所がなくて、私には勿体ないくらいの人なんだよ。

謙虚は美徳なんていうけど、そこは自信持っていいんだよ。

卑屈な自分を棚に上げて、そんなことを考えている自分がいた。



遠出していても、悠くんとの帰り道はあっという間に終わってしまう。

いつの間にかもう自宅の前にいる。


「今日も楽しかったです」


名残惜しいけど、笑顔を心がけていく。


「俺も楽しかったよ」

「悠くんのお陰で明日から頑張れそうだよ」


学校は嫌だけど頑張って乗り越えます……!


「無理はしないで。俺はまだ休みだから放課後会おうね」

「っ、うんっ」


気合を入れて、悠くんに悟られないように気丈に振る舞ってみせたけど、悠くんにはお見通しだったみたい。

また会えると思うと、つい大きく頷いてしまった。

嬉しさは隠し切れていない……隠す方が無理だよ。




次はいつ会えるかな。

放課後に会えるなら、頑張れそう……。

この日は遅い帰宅になったけど、余程疲れていたのかいつもより早く眠りに就いたのでした。
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