再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
それほど絶望しても、心の奥底でみっともなく淡い期待を抱いていた。

悠くんが私を信じて探してくれているんじゃないかって。

しかし、願いは虚しく、悠くんが現れることはなかった。


「あはは……期待して馬鹿みたい。きっと、私の顔なんて見たくないんだ……」


私は涙で濡れた頬をそのままに、乾いた笑いを零していた。

その笑いが止まると、また膝を抱えて嗚咽を零し始めた。




辺りはすっかり真っ暗闇になっていた。

ふと、鞄を学校に置いたままだと気付く。

今の時間帯は後夜祭で盛り上がっている頃だ。

行きたくないけど学校に戻るなら今しかない。


意を決して重い腰を上げた時、突然、ブレザーのポケットに入っているスマートフォンが振動した。

悠くん……?

淡い期待を抱いてそれを取り出すと、画面に表示されていた名は、“お父さん”だった。

何かあったのかな……?

悠くんじゃなくて残念にに思いつつ、私はお父さんからの着信に出ることにした。


「お父さん?」

「響、今はどこにいますか?」


お父さんは娘の私に対しても敬語を遣っていた。

物腰柔らかで、お母さんを一途に愛するお父さん。

本人には言えないけど、結婚するならお父さんみたいな人がいいなってこの年になっても思い続けていたりする。


「えっと、学校の近くにある公園だよ」

「すぐにその場から離れて傍のコンビニにいて下さい。迎えに行きますから」


どうしたのかな。


お父さんの緊迫感ある物言いに戸惑いつつ、従って公園から離れてコンビニへ向かうことにした。
< 145 / 182 >

この作品をシェア

pagetop