再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
向き合う勇気

数日後、休校が解かれて久しぶりの登校となった。

悠くんと別れた今、通学は一人きりとなる。

いつもなら隣に並んで手を繋いでいてくれたけど、それがない今、寂しさを覚えてしまう。

未練がましいな……。

ラインのメッセージのやり取りや、一緒に写った写真も消せずにいる。

ちなみに別れのメッセージはまだ既読になることはない。




学校に着いて、私は緊張しなから靴箱の前に立っていた。

ほぼ毎日ゴミや誹謗中傷の手紙が入っているからだ。酷い時は虫やトカゲの死骸も入れられていた。

今では泣かずに取り除くことが出来るようになったけど、平気と言ったら嘘になる。

私は恐る恐る靴箱の中を覗き込んだ。

だけど、その中身に私は目が点になった。

それを見つめ首を傾げたまま呟いた。


「ゴミが、ない……」


靴箱の中にゴミは一つも入っていなかった。

上履きも切り刻まれたり、落書きされることなく綺麗なままだ。

もしかしたら、たまたま嫌がらせをする時間が取れなかったのかもしれない。

私は考えることを辞めて、上履きに履き替えると図書室を目指して行った。




担任の先生から各教科の課題を受け取り、淡々とこなしていく。

昼休みの時間になると、私は飲み物を買いに購買へ行くことにした。

コンビニでも見かけない紙パックのマスカットの紅茶が好きで、秋頃に見かけた時からよく買っていた。

その途中、桐谷さんを見かけた。

いつもなら友達に囲まれているのに、今は一人でいる。

いつも可愛らしい笑顔を浮かべていたのに、顔を隠すように俯いている。

私はこっそりとそんな桐谷さんを見つめていた。


その時。


「笹山さんっ」


背後から声が聞こえてきた。
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