再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
「響も食べよう」

「うんっ、いただきます」


悠くんに言われて、ようやく私も水ようかんを食べ始めた。

和菓子切りで一口分切り分けて食べてみると、なめらかな食感と優しいあんこの甘さが口の中に広がった。


「美味しい……」


作った自分が言うのはなんだけど、美味しくて上手くできてよかった。


「でしょ」

「悠くんの淹れてくれたお茶も美味しいよ」


悠くんはお茶を淹れるのが上手で、苦味がなくてまろやかで美味しいの。


「それは良かった」


二人で水ようかんと煎茶を堪能した。


「一緒に食べるともっと美味しいね」


作ったものを一人で食べるよりずっとずっと美味しい。

悠くんと一緒に過ごす時間が楽しくて嬉しくて、私は自然と笑みを浮かべていた。




楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。


「家まで送るよ」


夕方の五時を半分過ぎた頃、悠くんはそう切り出した。

まだここにいたいよ。私と同年代の子はもう少し遅く遊んでいるというのに。

でも、悠くんを困らせたくなくて口から出そうなわがままを必死に飲み込んだ。

それに、送ってもらうのは悪いよ。


「私、一人で帰れるよ。夕方でも暑いし、送り迎えは大変だよ」


夕方でも気温は三十度台だし、私を送ってから家に戻るのは大変だよ。


「寂しいこと言わないで。少しでも響といたいのに」

「……っ」


悠くんは両方の手のひらで私の頬を包み込み、お互いの額をくっつけた。

キスが出来てしまいそうな近い距離にドキドキしてしまう。

また、私の顔赤くなっているかも……。


「お願いしようかな……私もちょっとでもいたい」


悠くんの言葉が嬉しくて、私ははにかみながら悠くんの厚意に甘えることにした。

その瞬間、私は悠くんの腕の中に閉じ込められていて、きつく抱き締められていた。
< 96 / 182 >

この作品をシェア

pagetop