僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「…………ごめん」

 散々時間をかけて考えて、言えたのはそんなセリフだけ。
 でも……僕はちゃんと葵咲ちゃんの言いたいこと、分かってるつもりだから。

 だからこれからは……。

「ねえ、葵咲。すぐには無理だし、いつもは情けなくて恥ずかしいから出来ないけど……キミに甘えたくなったら……葵咲()()()って呼んで……いい?」

 実際、葵咲ちゃんの言う通りなんだ。

 僕は葵咲ちゃんの前では――。
 いや、寧ろ“葵咲ちゃんの前で()()は”いつも以上に虚勢を張りたくなってしまう。

 僕の初めてを葵咲ちゃんと共に迎えられなかったのだって、そのせいだ。

 僕は……葵咲ちゃんの前で恥をかきたくなかった。

 でも、そのせいで、葵咲ちゃんを悲しませてしまったんだよね。

 今回はうまく誤魔化せたけど……この先もそうとは限らない。

 僕は――きっと……彼女が言うように、もっともっと葵咲ちゃんを信じるべきなんだ。
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