僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』

隠し事が下手なキミ

 程よい疲れと幸福感を身に(まと)ったまま、僕たちは二人でお風呂に入った。

 お湯を気持ちいいくらいにはじく、健康的で肌理(きめ)(こま)かい葵咲(きさき)ちゃんの色白の肌を、ボディーソープのふわふわの泡で包み込むようにして洗ってあげたら、彼女は僕にも同じようにしてくれて――。

 当然、「じゃあ」と大人しく洗いっこするだけで終わるわけもなく。

 でも、あいにくスキンは持ち込んでいなかったので、挿入はなしで、お互いに泡だらけで触りっこして、()かせるだけに留めておいた。

 僕には最近、葵咲ちゃんのお尻のほうも征服したいという欲求があって……洗いながらどさくさに紛れて後ろの方を触ったら、怒られてしまった。でも、いつか必ず、と思っているのは葵咲ちゃんには内緒。

 実際そちらも開発できたなら……もう少し色々幅が広がると思うんだけどな、とか考えてしまう程度には、僕は彼女の全てを僕のものにしたいと思っている。

理人(りひと)は先に上がっててっ!」

 ちょっとプンスカしたままの葵咲ちゃんに、バスルームから追い出されてしまった。

 僕はタオルドライした身体に、ホテル備え付けのバスローブを羽織ると、ふと思い立って部屋の入り口へ足を向ける。

 さっき脱ぎ散らかしたままになっていた二人のコートを拾い上げると、軽くバサバサと(はた)いてハンガーに掛けてから、入り口横のポールタイプのハンガーラックに吊るす。

 僕の上着はともかく、葵咲ちゃんの純白のコートがしわになったり汚れてしまったりしていなくて本当によかった。

 葵咲ちゃんのコートの片腕を持ち上げて、鼻に近づけると、

(いい匂い)

 コートからは、大好きな葵咲ちゃんの香りがした。
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