僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 この際、熱でヘロヘロだとしても、自分の世話を誰かにしてもらおうとか言う甘えた考えは捨てるべきだ。

 いや、それよりむしろ……。

 帰ったら愛猫(セレ)にご飯あげて……トイレの掃除とかすませて……やらないと。

 その後でやっと布団に入れる……かな。あー、ダメだ。スーツくらい脱がないと……。

 考えていたらセレの世話が結構大変なことに思えてきた。

 いや、でもそこは飼い主として踏ん張るしかない。

 セレがいなければ僕も実家に、と言うところなんだけど、現にセレは我が家にいるんだから、考えるだけ無駄だ。
 生き物を飼うというのはこういうことだ。
 しんどいからって、自分本位ではいられない。

 うちは母親が猫アレルギーだから、実家に連れて帰るのも無理だしね。

 そう言えば葵咲(きさき)ちゃんのところはどうだっけ。

 そこまで考えて、いや、でも猫は家に()()って言うし、こっちの都合で環境変えるのは良くないか。
 やっぱり僕が頑張ろう……、うん。

 散々悶々として、そんな結論に達した。
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