僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***

 職員課に寄って、図書館の閉館時刻までの手配の件を事務員さんに話してから、早退の手続きを済ませて車に乗り込んだ。

 シートにもたれかかると同時にふっと気が抜けて、そのままそこでダウンしてしまいそうになる。

 あー、ダメだ。もう少し頑張らないと。

 幸いマンションまでは車で5分足らず。歩いても行き来できる距離だから、まぁ何とか辿り着けるはずだ。

 葵咲(きさき)ちゃんはまだ講義中だろうから、メッセージアプリを起動して体調不良で早退する旨と、週末は実家に戻って欲しいという内容を送信しておく。
 着替えとか取りに一旦はマンションに戻って来ないといけないだろうけど、寝室には入らないでね、って念押ししておいた。

 こんなしんどいの、大好きな彼女にうつしたくない。

「よしっ!」

 無駄に気合いを入れるようにつぶやいてから、僕は車にエンジンをかけた。

 9月初旬。
 まだまだ屋根のないところに置いていた車内は日差しに煽られて暑すぎるくらいの熱気をはらんでいる。……はずなのにな。
 そんな中でもこんなにもゾクゾクしてしまうのは、熱が上がってきているからだろう。
 ヒーターに手を伸ばしながら、そんなことをしようとしている自分の奇行に苦笑した。
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