僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』

本文

「お砂糖を切らしてしまったから、ちょっとそこまで買いに行ってくるね」

 そんな言葉を残して葵咲(きさき)ちゃんがマンションを後にして数分。


「マジかよ」


 ザーッと言う音に、窓外をふと見た僕は、景色が霞むほどの大雨が降っていることに思わず舌打ちをした。

 そんな僕を、ソファの上から愛猫(セレ)怪訝(けげん)そうな顔をして見つめてくる。


「セレ、葵咲(ママ)、雨で困ってるかも知れないよ」

 ホント、天気予報なんてあてにならない。今日は雨が降るなんて一言も言っていなかったのに、こんな豪雨。


 葵咲ちゃん、濡れずに雨宿りできているだろうか。


 おそらく、彼女が向かったのは徒歩5分もかからないところにある、小さなスーパー。


 傘を持って追いかけようか。
 そう思ってセレに「ちょっと出てくるね」と声を掛けて玄関まで出向いたところで、パタパタと言う足音が聞こえてきた。
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