僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「僕はこんなに寂しいのに……」

 間近、腕の中から逃さないようにした葵咲の目を覗き込むように不満を口の端に乗せたら、葵咲が一瞬だけ瞳を見開いてから「おバカさんね」とつぶやいた。

「私だって寂しいに決まってる。でも……大人だもん。我慢しないといけない時があるの、分かるでしょう?」

 五つも年下の女の子なのに。
 葵咲の方がお姉さんみたいだ。

 理人は葵咲にそんなふうに諭されるたび、いつも同じことを思う。

 自分はいつだって駄々っ子で、葵咲はいつだって理知的。

 葵咲の存在が理人をどうしようもない甘ったれにするのも事実だけど、そんな理人の軌道修正を測れるのもまた葵咲だけなのだ。
< 305 / 332 >

この作品をシェア

pagetop