僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』

僕が一晩いなくても平気なの?

葵咲(きさき)ぃ〜。出張入った。正直行きたくないんだけど……」

 理人は、帰宅するなりキッチンに立つ葵咲(きさき)に、ごねる様に不平不満を口にする。

「お仕事なら仕方ないよ。頑張ってこなきゃ。――ね?」

 そんな理人を、すぐさま火を止めて振り返ると、葵咲が「よしよし」と頭を撫でて慰めてくれる。

 そんな葵咲の対応に、理人(りひと)は小さく吐息をひとつ。

 葵咲が、自分を(ねぎら)ってくれながらもそう言うだろうことは、想定の範囲内だったはずだ。

 だけどこんな風にサラリと受け入れられてしまっては、ちっとも面白くないではないか。


葵咲(きさき)は……僕が一晩いなくても平気なの?」

 理人のすぐ前に立った葵咲(きさき)が、彼の頭に伸ばしたままの手をギュッと握ると、理人はそのまま彼女の腰にも腕を伸ばして、身体を密着させるように抱き寄せる。

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