僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「僕はキミと付き合えるようになってからはずっと……。バレンタインはもちろん、どんな時だって……葵咲(きさき)ちゃん以外からの贈り物は受け取らないようにしてたんだけど……。まさか気付いてくれてなかったの?」

 言われて、そう言えば……と思った葵咲だ。

 去年のバレンタインも、理人は何も持って帰らなかった。


「理人、チョコ好きなのに……いいの?」

 嬉しい癖についツンとした態度で心裏腹なことを言ってしまうのは、葵咲の悪い癖だ。

 だけど理人はそんなところも含めて葵咲のことを愛してくれているから。

「別に構わないよ。だって……その分、葵咲ちゃんが存分に僕を甘やかしてくれるんだろう?」

 理人の言葉に、葵咲はぶわりと全身が熱くなるのを感じた。


「……家にね、ガトーショコラが作ってあるの。あと、いつもよりちょっぴり豪勢な食事も用意してあるから。……早く帰って一緒に食べよう?」

 葵咲の言葉に、理人は彼女の身体をもう一度ギュウッと抱き締めて、「それは楽しみだ」とにっこり笑う。

 そうして葵咲の熱くなった耳朶をチュッと吸い上げると、
「食事とケーキの後は……当然飛び切り甘いキミを食べさせてくれるんだよね?」

 甘えたようにそう言って、葵咲の身体を更に火照らせる。

 明日は平日だから……そこそこに加減はしてくれるだろうけれど……それでも寝不足は覚悟しなければいけなさそうな……そんな予感がした葵咲だった。


   END(2023/02/12)
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