僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***

「あ、やんっ。理人(りひと)ぉっ、耳っ、ダメっ」

 僕が執拗に耳のなかに舌を差し込むように這わせながら彼女の胸を責め続けたからだろうか。

 葵咲ちゃんが涙目で僕を見上げてきて、自由になった手で、乳房に伸ばした僕の手を握った。

(耳はダメと言いながら、止めるのは胸のほうなんだ?)

 その矛盾が可愛くて、思わずクスッと笑ってしまう。

「もぉ、……りひ、との……意地悪っ」

 途端葵咲ちゃんがプッと膨らんで、僕を睨みつけてくる。

 アーモンドアイの大きな瞳が、僕をじっと見上げてくるのが愛しくて愛しくて、僕は思わず彼女をギュッと抱きしめた。

 残念だけど耳を責めるのも乳首を責めるのも、今は一旦中断だ。

「ごめんね、葵咲。キミがあんまりにも可愛いから、つい……」

 僕は葵咲ちゃんと一緒にいると、幸せすぎて自分がどんどんおかしくなるのを止められなくて困る。

 僕の言葉に、葵咲ちゃんが小さな声で「バカ……」とつぶやいたのが、震えてしまうほどときめき案件で。
 バカって言われて嬉しいとか、葵咲ちゃんにしか抱かない思いだよ?

 腕の中に抱きしめた葵咲ちゃんの甘い香りを胸いっぱい吸い込んで、僕がいま両腕に囲っている女の子は、自分にとって何よりも大切で……かけがえのない存在なんだと実感する。

 それだけで泣きそうになってしまうぐらい心が満たされて――。

「葵咲、僕は何て幸せなんだろう」

 葵咲ちゃんの髪に顔を埋めるようにしてうっとりとそう(ささや)いたら、「私も……」って小さく返ってきた。

 余りに自然に言われたから、僕は一瞬何のことか分からなかったんだ。
< 93 / 332 >

この作品をシェア

pagetop