名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 私を抱きしめる朝倉先生の腕に力が籠る。
 その胸元に顔を埋め、ひそかに朝倉先生の体温や香りを堪能してしまった。
 もしかしたらという、期待をして今日は来てしまったけど、このまま先に進んでしまうのかしら?

 そんなことを思っていたら
 ” ピンポーン ”  
 不意にインターフォンが鳴り響いた。
 突然の音に眠っていた美優が驚いて泣き出してしまう。

 二人して慌てて離れ、私は美優を抱き上げあやし、朝倉先生は「誰だろう?」と呟きながらインターフォンの対応に出る。
 「今、来客中だから困るよ」という、朝倉先生の声が聞こえ、その慌てた様子に「あの、私、帰りましょうか?」と声を掛けた。

  朝倉先生は、首を横に振り、帰らなくていいよと私に訴えていた。
 二言三言対応して、インターフォンを切るとため息をつきながら、エントランスの開錠スイッチを押した。
 「ごめんね。姉が突然やってきて、少し寄るって言うんだ。直ぐに帰らせるから……」
 いきなりの話に驚いたが、既にまな板の上の鯉の状態。

 マザーズバックから化粧ポーチを取り出し、手鏡で口紅だけ直し、手櫛で髪を整える。
 すると、タイミングを見計らったように玄関のチャイムが鳴った。
 
 朝倉先生のお身内に突然会う事になり緊張する。
 シングルマザーの私が、翔也さんの恋人として認めてもらえる事が出来るのだろうか?
 はぁーっと、深呼吸をした。
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