名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

「美優、やめてぇ」と焦っていると笑いながら朝倉先生がドアを開けて
「お待たせ」と言って出迎えてくれた。
 ご機嫌の美優が朝倉先生に抱っこをせがんで手を伸ばす。
「お姫様は、ご機嫌だね」っと朝倉先生が美優を抱き上げた。

 朝倉先生の後に続いて、おじゃまします。と、上がらせてもらう。
 リビングに入るとマザーズバックから保冷剤に包まれたお土産をガサゴソと取り出した。
 北海道のフレッシュクリームチーズでパッケージに可愛らしい月の絵柄が描いてあるもので、ワインの付け合わせに美味しいはず。

「これ、チーズなので要冷蔵なんですが……」

「冷蔵庫、開けても大丈夫だから入れてもらってもいい?」

 美優と遊ぶ朝倉先生に言われ、キッチンに入った。
 システムキッチンの贅沢な作り、自分の部屋とは比べ物にならない。まあ、キッチンが良くなったからと言って料理の腕が上がったりはしないからなぁ。っと、くだらないことを考えなら一人暮らしの男性の物とは思えないほど立派な冷蔵庫を開らくとマネキネコのスパーリングワインを発見!

 それだけで今後の事を意識してしまう。
 手の平を自分の頬にあてると火照っているのが分かった。
 火照りを冷ますかのよう、流しに向かいカランを押し上げ手を洗う。
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