名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

 意識し過ぎなのは、自覚していたけれど自分から誘うなんて事をしたのは、初めての経験で、意識するなと言う方が無理なのだ。
 
 でも、浮かれてばかりでなく、朝倉先生に話しておかなければならない事もある。
 リビングに戻ると楽しそうに美優と遊んでくれている朝倉先生の姿に目を細め、愛おしい二人といつまでも一緒にいたいと思った。

手放したくないなら変に隠さず、伝えて置かないと後で拗れる原因になるから 言わないと……。

「あの、翔也さん。先日お話した、美優の認知の手続きが終わりました」

 朝倉先生は少し表情を曇らせ美優を見つめた。
 
「美優ちゃんの権利だからね。本音を言うと少し寂しいかな」

 こんな時、なんて言ったらいいのか……。
 返事に詰まってしまった。
 
 「夏希さん、おいで」
 朝倉先生は美優を右手で抱いて、左手を広げた。
 その左手に吸い寄せられるように身を預け、朝倉先生の腕の中に納まった。
 朝倉先生の胸の中に私と美優が包まれている。
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