名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

ドアが開くと将嗣のお母さんが立っていた。

「……少し、いいかしら?」
 と声を掛けられ、ベッドの横の椅子を勧めるが、座ってくれない。ベッドの横で深刻な表情で立っていた。そして、大きく息を吐い込むなり謝罪の言葉を吐きだした。

「夏希さん、わざわざ来てくれたのに、こんな事故に巻き込んでしまってごめんなさい」
 
 将嗣のお母さんに頭を下げられ、事故はお母さんのせいでも将嗣のせいでも無く、信号無視をしてぶつかった車の運転手のせいだから気にしないでと伝えると、ようやく頭を上げてくれた。
 ホッとしたのも束の間、将嗣のお母さんはパッと目を輝かせ私に宣言するかの如く言い放つ。

「夏希さんは、ご両親がいらっしゃらないから、入院中は、お世話させて頂くわ。美優ちゃんのお世話も任せてね」

 美優の世話を自分で見れない以上お願いするしかないが、その張り切り様に不安が募る。

「病院は完全看護なので私は大丈夫ですが、美優のことは将嗣にお願いしてあるので、ご迷惑をお掛けします」

「美優ちゃん、可愛いわよね。孫だと余計に可愛いのかしら? お友達で孫自慢する人の気持ちがわかるわー。やっと、私も孫自慢が出来るのよ」

 嫌がらずにお世話をしてくるのはありがたい事と思って、将嗣のお母さんのおしゃべりに暫く相槌を打っていた。お母さんは、普段の生活の事を中心にお父さんの介護の事や将嗣の事など色んな話しをされた。
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