名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~


「母さんには、しっかり言い聞かせておくから、ごめんな」

 将嗣はそう言うと美優を連れて帰って行った。
 私が目が覚めた時に、美優がそばにいる方が安心するだろうと、気づかいをしてくれたのがわかった。

 一人病室に残され、自由がきかない状態で少し退屈をしながら、液漏れで色が変わった右腕を眺めていた。
 薄い黄色や赤黒い部分、慌てて腕を引張って、スマホを探した代償。

 パニックを起こした、あの時の無力な自分を振り返る。
 日々困らない程度の収入はあるけれど、シングルマザーの自分がケガや病気になった時にそれを支えるほどではない。

 そして、今、美優の預け先だってみんなに迷惑を掛けまくっている。頼れる身内は紗月だけで、彼女の仕事が無い時間ならお願いはできるけど、長時間や長期では無理。

 こんなんだから将嗣のお母さんに母親としての適性を疑われ、親権を取り上げると言われてしまうのだろうなぁ。まあ、それだけじゃないけどね。
 世の中のパパやママは、病気やけがになった時、どうやって乗り越えているんだろう。
 夫婦助け合って……。実家の親が……。
 どちらも自分には無いもので、その上お金も無いんだから、どうしようもない。
 漠然とした不安が押し寄せる。
 
 今まで、自宅ワークで仕事と育児の両立を目指してきたけれど、万が一の時のために保育園や民間幼稚園をあらかじめ調べて置いたり、長期入院の時の対策も考えて置かないといけないな。
 美優のために何が出来るのか、考えないといけない。
 

 



 
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