名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「夏希さん、手を出して」
朝倉先生は私の左手をそっと持ち上げ預けて置いたピンクダイヤの指輪とふたりで選らんだ結婚指輪を左手の薬指に嵌めてくれた。そして、その指にキスを落とし、艶のある瞳が私を見つめる。
「足の痛みは、大丈夫?」
「痛みはないの。筋力が落ちちゃったから無理しないように言われているだけ」
「それなら良かった。無理はさせないよ」
朝倉先生が私の顎に手を添え、唇が重なる。重なった唇から熱が伝わりだんだんと体が熱くなっていく。甘い息が上がり、その熱に溶かされていくよう。
朝倉先生のウッディな香水の香りに誘われ、髪に手を梳き入れ、たくさんのキスをねだる。啄むようなキスも深いキスも私を夢見心地にさせる。そのキスが耳にも首筋にもされて、ゾクゾクと熱が腰に溜まり出す。
そして、私たちは、ベッドの上で揺蕩うように甘い口づけと情熱を交わした。
一年前のあの日、陣痛で苦しむ私を助けて、美優がこの世に産まれ出る時を見守ってくれた。
その時は名前も知らなかった私のヒーロー。
その後、偶然の出会いはきっと運命。そして、運命に導かれ何度も何度も助けてくれた。
運命の輪の中で、引き合い求め合い、これからも一緒に歩んでいく。
私だけのヒーロー。
朝倉先生を見つめる。
優しい瞳が私を見つめ返す。
私の左手を手に取り薬指にキスを落とし、指を絡めた。
絡められた指にドキッと心臓が跳ねる。
艶を含んだ瞳が私を見つめ、唇が動いた。
「夏希さん、愛してる」
「翔也さん……私も愛してる」
【終わり】
次回、朝倉先生視点の美優ちゃん誕生のお話があります。