名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「だって、今日のお礼に夕飯をご馳走させて頂くつもりだったのに朝倉先生が払ったらお礼にならないじゃないですか」

 私は、おつりを貰うべく配達員に手を差し出し、おつりを受け取る。配達員は肩を震わせながら帰って行った。

 届いた夕飯は、ウナギのひつまぶしセットが二つ。

 トレーをお持ち上げ、部屋に移動しようとすると朝倉先生が、トレーをスッと持ち上げた。

「これぐらいは、させてくれる?」
と部屋に持って行ってくれる。

 何をしてもスマートな人だな。
 散らかったテーブルの上をサササッと片付け向かい合わせに腰を掛けた。

 朝倉先生が、大笑いしてくれたおかげで、さっきまでの微妙な緊張感から解放された気分だ。

 朝倉先生の瞳の意味は、私には考えてもわからない。
 きっと、お姉さんの子供たちの事でも考えていたのだろう。
 あれ? 聞いたことが無いけど、朝倉先生って独身だったかしら?

 自分がお礼をしたからと言って強引に引き留めてしまったけれど、迷惑だったのでは? と、今更ながら心配になってきた。

「朝倉先生、散々お引止めしてからなんですが、どなたかお家で待っていらっしゃったりします?」
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