名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
私達は、大人だ。たとえ唇が触れてしまったとしてもお互いファーストキスでもないし、事故だと認識出来る。
 けれど、仕事相手で、恩人でもある朝倉先生と唇を触れ合ったら後々支障出るだろう。
 今は、子供との生活を守ることが第一に考え、行動していかなければならない。例え、思わぬ距離に自分の心臓が跳ねたとしても気が付かないフリをする。

 朝倉先生は、イラストの続きを書きはじめた。
 そう、こんな事故は、無かったことにするのが一番だ。

 そもそも、私のようなシングルマザーの30点の女が、恋心を抱いたとしても ザ・パーフェクトな朝倉先生に迷惑なだけじゃないか。
 あの日のヒーローが朝倉先生だと知って何かベクトルの向きが変わり出したとしても、憧れは憧れとして取って置いて、アラサーなんだから分別を持って、現実を生きる。

 あの日は、出産という特殊な環境下だった。それを助けてくれたのだから
” 特別 ”を感じてしまうのは、仕方のない事。
 それを勘違いしないように自分に言い聞かせた。
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