名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
どうしよう、涙が出そう。
 美優が将嗣に抱っこしてもらえるなんて、少なくとも娘が大きくなった時に『あなたは実の父親に抱っこしてもらった事があるのよ』って言ってあげられるんだ。

「名前は、なんて言うの?」

「美しいに優しいで、みゆう」

「そうか、美優ちゃんおいで」

 将嗣の腕に美優が抱かれる。
 娘・美優が実の父親に名前を呼ばれて抱いてもらった瞬間だった。
 おっかなびっくり娘を抱き上げる将嗣に少し緊張した表情の娘・美優。
 二人を見ていると親子である事を黙っているのは、大変罪深い行為だと思った。例え、どんな結果になろうとも将嗣には、真実を打ち明けなければいけない。

 この初めての様子を心に止めて置きたくて、携帯電話のカメラでパシャリと写メを撮った。

「なに写真なんか撮って」
 将嗣が柔らかく笑う。
「だって、緊張している顔が面白くて」
私も笑った。
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