名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 ” ピンポーン ”とチャイムが鳴り、やっとの思いでインターフォンを取ると朝倉先生の声が聞こえてホッとする。

 壁を伝い玄関を開けた。
 逆光で朝倉先生の背中から日の射す光景は、まさに神降臨!
 尊い……。

 朝倉先生の姿を見て、気が緩んだのか、フラッと目眩がした。
 
「谷野さん、私につかまって」
と、膝裏と背中を支えられ、体がフワリと持ち上がる。

 ひゃー! お姫様だっこ! 死ぬ!
 朝倉先生からウッディーな香りがして距離の近さを感じ、興奮状態でヤバイほど熱が上がっている気がする。
 心拍数もドキドキと全速力走った後のようになって胸の奥がキュン。

 病気とは違う意味で死ねます。

 そんな、冗談では済まされないぐらい本当に具合が悪い。
 この際だから” 無理を言っても病院に連れて行ってもらった方が良いのでは? ” という思いと “ イヤイヤいくらなんでも迷惑なんじゃない? ”と言う思いが過ぎる。

 ベッドの上に降ろされ、朝倉先生の手がおでこに当てられた。
 余計に熱が上がりそう。

「ずいぶんと熱が高いな、他に症状は? 咳が出るとか、喉が痛いとか」
 
「あの、お恥ずかしい話ですが、胸が張って痛いんです」

 私が伝えると、朝倉先生は少し考えるような様子の後、電話を掛け始めた。
 床の上で遊んでいた美優をヒョイと抱き上げ、あやしながら通話をしている。
 尊い……。
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