名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 朝倉先生ってば、なんで私が困っていると現れて助けてくれるんだろう。
 こんなんで、好きになるのを止めるなんて無理だよ。
 仕事相手の憧れの人ヒーローからとっくに好きな人に変わっていた。
 
 朝倉先生は、電話を掛け終わると私の方に向き直り、心配そうな顔をしながら声を掛けてくれる。
 
「今から出かけるから車のカギを貸して、それと、美優ちゃんの荷物ってどうしたらいいか教えてくれる?」


 幸いマザーズバックは、ある程度時間がある時に荷物を整理してあったので、ポットにお湯を用意するぐらいで荷物の準備は完了した。
「これから、助産師さんのところに行くから」
 と、言われた。
 婦人科ならわかるけど、何故、助産師さんのところなのかピンと来なかった。でも、朝倉先生にお任せするしかない。
 ヨロヨロと立ち上がり着替えの準備を始める。
 すると、朝倉先生から声が掛かる。

「そのままの服装でいいよ。病人なんだから、上着を羽織れば大丈夫」
 
 チャイルドシートに美優を座らせると直ぐに朝倉先生は私を迎えに来て、脇を支えてくれた。おかげでふらつかずに車の後部座席に乗り込むことが出来た。
 
「着いたら起こすから寝ていていいよ」
 ふわりとブランケットで包み込まれ、とても温かい。
 熱で朦朧とする中、朝倉先生の気遣いが沁みる。
 言葉に甘えて目を瞑るとホッとしたのか直ぐに眠りに落ちた。
< 80 / 274 >

この作品をシェア

pagetop