すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
***

「そういえば……タクシー来ないね?」

 こんなに長いこと話しているのに、呼んだはずのタクシーが来る気配がないことに気が付いた私は、ヒロの腕の中で小さく身じろいだ。

 ヒロのことだから、そのさんに「俺が送って行きます」って言ってくれた時点で手配してくれていそうなのに。


「あ……」

 そこでヒロがしまったって顔をしてそうつぶやくから、私、もしかしてって思って。

「まさか呼んでない……とかじゃない、よね?」

 そう聞いたら「そのまさかだな」って苦笑するの。

 しっかり者の彼にしては有り得ない凡ミスに、

「珍しいね」

 クスッと笑いながらそう言ったら、「お前のことで一杯一杯だったんだよ」って拗ねたみたいに吐き捨てるの。

 そっぽを向いた顔が、薄暗がりでも赤らんでいるのが分かって、私はキュンとしてしまう。

 何これ。
 私の彼氏が物凄く可愛いんですけど!?


「あの、ね……」

 そこで彼の顔を見上げて言葉をつむごうとしたら、

「まだ離れたくないって思ってんの……俺だけか?」

 とか。
 今まさに同じことを言おうとしてました!

「私も……」

 なんだか照れくさくなって、うつむいてそう応えたら、「コトの家、行っていい?」って聞かれて。

 私は「うん」って小さくうなずいた。
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