すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
「私、変形菌入りのアジフライ、割と美味しかったと思うの」

 言ったら、「俺はトルティーヤの方が変形菌(やつら)の気配感じて好きだったな」って返してくれて。

「そうだっけ? ますますもう一回(もっかい)食べたくなっちゃった」

 柳川(やながわ)が感じたものを、私も共有したい。
 そう思って言ったんだけど。

「あんなモンまた食いたいっていう女子、鳴宮(なるみや)ぐらいだろうな」

 ってほんの少し笑顔を見せてくれたの。

 ホント、柳川ってば貴方をフッた片想いの子のこと言えないくらい鈍いんだから。


「男子だって付き合ってくれるの柳川ぐらいだよ。だからね、一緒に行ってくれたら今日はおごっちゃうし……この写真集も貸しちゃう♥」

 鞄から、買ったばかりの『粘菌生活のよろこび』をチラ見せしながら「柳川これ、見たいって言ってたよね?」と決断を迫る。


 どんだけ必死なんだよって呆れてくれても構わない。

 どうか、ほんの少しでも柳川の気持ちが晴れますように。

 私はそう願わずにはられないの。

 そのためなら私、道化(どうけ)にだって何にだってなれるよ!?
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