すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
「雨と風、強くなってきたね」

 布団の中。
 何も身につけていない胸元を隠すように上掛けを押さえながら、言凛(ことり)が小さくつぶやいた。

 そんな彼女を腕の中に抱き寄せると、素肌の触れ合う感触が心地よくて。
 彼女が怖さも恐れも何も考えられなくなるくらいに抱き潰してやろうか、なんて愚かな思いの浮かんでしまった寛道(ひろみち)だ。


「ああ……。けど、ひとりじゃないから案外平気だろ?」

 思い浮かんだ邪な気持ちを振り払うように、極力優しく言凛の髪をかき上げると、(すべ)らかな頬にやんわりと口付けを落とす。


「――何かさ。こうしてると雨と風に閉ざされて、俺とコトの気配以外何も感じらんねぇじゃん?」

 頬から唇を移動させて、ほっそりとした首筋にも唇を寄せる。
 途端、言凛が「んっ」と小さく(あえ)いで身じろいだ。

 その仕草が、寛道には物凄く可愛らしく思えて。
 つい、願望混じりな言葉を告げてしまう。

「何か今だけはこの世界に俺とコト、2人だけな気がしねぇ?」

 胸の膨らみのあたりには、少し強めに吸い付いた。
 言凛の白い肌に寛道のものだという印が残るくらいの強さで。

「やっ、ヒロっ。跡がついちゃう」

 寛道の髪の毛をギュッと掴んで小さく抗議する言凛(ことり)に、
「付けてんだよ」
 とサラリと答えたら「ヒロだけずるい」と拗ねたような声が返った。

「だったら俺にもつけて?」

 ククッと笑いながら言ったら、言凛が一生懸命寛道の胸元に吸い付いてきて。

 だけどなかなかうまく出来ないみたいで。それがまた抱きしめたくなるくらい愛らしくて。


「2人なら、こんな天気も悪くないな」

 自分の胸元でふるふるする言凛の頭をやんわり撫でてそう言ったら、言凛が寛道の顔を見上げて小さくうなずいた。



      END(2021/08/12)
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