すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
「田中先輩、そ(・)の(・)さん。鳴宮(なるみや)を女として見るとか……あり得ないこと言わないで下さいよ」

 と聞こえてきて。

 え?
 ちょっと待って。いまの声って……柳川(やながわ)?

 私が、大好きな人の声を聞き間違えるわけがない。

 そう思うのに、漏れ聞こえてきた言葉の内容が衝撃的すぎて、私はその事実を受け入れる事ができなかったの。


 ショックのあまり肩掛けにしていた鞄がずり落ちて、乾いた音を立てて。

 その音に、中にいた3人――4年生の2人と柳川がハッとしたようにこちらへ視線を向けてきた。

「あ、あの――私っ」

 柳川に「女として見ることはあり得ない」と言われたのがショックで、素知らぬ顔で入室したかったのに声が上擦ってしまう。

 それを意識すればするほど胸の奥がズキズキと痛んで鼻がツン、として。


「きょ、今日は体調がイマイチなので……えっと……帰りますねっ」

 さもそれだけを伝えにきたのだと言う体(てい)でまくし立てるように言うと、そっと後ずさって、扉が閉まるのも待たず、居た堪れなさにくるりと踵(きびす)を返した。

 本当は走り出したい気分だったけれど、廊下に出たらすぐよそのゼミ生がいて……動揺を悟られたくなくて思わずうつむいて、はやる気持ちを抑えるように早足で歩き出す。


 と、すぐ後ろから「鳴宮(なるみや)、待って!」と声がして――。
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