すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
 そう言って玄関を開けた柳川(やながわ)を、「あ! ちょっとだけ待ってて」と引き留めると、私はさっき出したのとは別にしてあったクッキーを、可愛い絵柄の入ったジップロックに移し替えた。
 そうして、誰かに何かを渡すときに使えたら、と棚のすみっこによけてあった小さな手提げの紙袋に入れて差し出す。


「えっと……私が焼いたクッキー。あんまり数がないけど……一応チョコと紅茶とプレーンのが入ってる。――よかったら……弟さんたち()

 綺麗にラッピングして、とまではいかなかったけれど、急ごしらえにしては上々かな。

 本当は「弟さんたち()」って言いたかったのに、何となく恥ずかしくて「に」って言っちゃったの、ちょっと残念だったな。

 私が1番食べて欲しいのは柳川だったのに。


 差し出された紙袋を見て、柳川は一瞬瞳を見開くと、「サンキュー。()()()()()()()食べさせてもらうよ」って言ってくれた。

 私は、言えなかった言葉(きもち)を柳川に汲んでもらったような幸福感に包まれて、ほわりと胸が温かくなる。


 梅雨の長雨と、親友のお節介のおかげで、ほんの少しだけ柳川と久々に〝心が〟近付けた気がする。

 このまま進展していけたらいいな。

 それもこれも、そのさんとの集まりがどうなるかに掛かってくるのかな?って思いながら、柳川の姿が見えなくなるまでアパートの外廊下で見送った。
< 85 / 172 >

この作品をシェア

pagetop