すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
「あっ! そう言えばクッキーくださったの、鳴宮(なるみや)さん?」

 聞かれて、「……はい。お口に合えばいいのですが」と応えたら、

「有難うね。下の子達が大喜びしてたんだけど、お兄ちゃんったら自分が帰るまで手ぇ付けたらブン殴るって脅すもんだからしょんぼりよ〜」

 クスクス笑いながらお母様が柳川(やながわ)を仰ぎ見て、彼に睨まれたのか「まぁ怖い! 邪魔者は退散するわね」って手を振ってお家の中に引っ込まれた。


 私は柳川のムスッとした横顔をそわそわと見つめながら、2人して軒下でタクシーを待って。

 鈍色(にびいろ)の空から糸のように降り注いでくる雨を見上げながら、とりあえず柳川がクッキーを気に入ってくれたみたいで良かった、って思った。
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