すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
ちょっと待って、そのさん!
 結局あれこれとハプニングに見舞われた私たちは、約束の時間ギリギリにそのさん指定の居酒屋に着いた。

 飲むからということで、柳川(やながわ)は私のアパートにシーツを下ろしたあと、一旦車を置きに帰って。

 行ったり来たりはタイムロスになるからと、そのまま車に乗せられて柳川家について行く羽目になった私は、期せずして柳川のお母様と鉢合わせしてしまった。


「まぁ! 寛道(ひろみち)! うちに花々里(かがり)ちゃんと小町(こまち)ちゃん以外の女の子が来たの、初めてじゃない? もしかして……彼女?」

 お母様の口ぶりから察するに、花々里(かがり)さん同様、小町(こまち)さんも幼馴染みかな?と思う。


 嬉しそうに尋ねるお母様に、柳川が「鳴宮(なるみや)が怯えてんだろ。がっついてくんな」とぶっきら棒に返して。

 私はペコリと頭を下げて、「初めまして。柳川くんと同じゼミの鳴宮(なるみや)言凛(ことり)です」と自己紹介をしてから、何となく柳川の後ろに隠れる。

 彼女ではないんです、と言わなきゃいけなくなりそうなのが悲しかったのと、柳川が肯定も否定もしないで居てくれたのが何となく嬉しくて。
< 87 / 173 >

この作品をシェア

pagetop