すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
***

「おーい、ふたりとも、こっちこっち!」

 入店したと同時、障子戸を引き開けて顔を覗かせたそのさんに手招きされて、奥まった個室に近付く。

 部屋前の上がり(かまち)で靴を脱いで一段高くなった室内に上がると、どうやら4人用のお部屋みたいで。


「突っ立っちょんるは落ち着かんし、2人とも()よ座りんちゃい。――あ、もちろん言凛(ことり)ちゃんは俺の横ね」

 そのさんにポンポン、と彼の左隣の席――位置的には奥側の壁横――を促されて、指示に従う。

 付き合っている(てい)なら当然の席順だと思いつつも、何となく落ち着かなくて。

 私が座るのを見て、柳川は私とそのさんの対面、ちょうど私たちの中間になるあたりに着座した。

 足元の床が掘り下げられていて、足が下ろせるようになっているのが有難い。正座とかしなきゃいけなかったらしんどかったもの。


 私たちが座ってすぐ店員さんがオーダーを取りにやって来て、そのさんが「2人ともとりあえず生でええ?」と聞いてきて、私も柳川もうなずいた。

 程なくお通し――山芋とオクラの酢の物――が運ばれてきて、そのさんが「なんか食べたいんある?」とメニューを差し出してきて。

 最初は定番がいいよねって話になって、そのさんは軟骨のから揚げを、柳川はだし巻き玉子を、私はトマトのスライス頼んで、みんなで小皿に取り分けてシェアすることになった。
< 88 / 172 >

この作品をシェア

pagetop