すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
俺の質問にちゃんと答えろよ
 結局あの後、注文していた残りの食べ物がポロポロと届いて。

 3人、当たり障りのない会話――主にゼミでの研究の話――をして20時半には早々にお開きになった。

鳴宮(なるみや)さん、俺、駅の沿線に住んどるけ、このまま最寄り駅に向かおうと思うちょるんじゃけど、鳴宮(なるみや)さんは家、どっち方向?」

 お店を出たら雨は止んでいて。
 少し気温が上がっているのか、しっとりと濡れた地面から、雨に濡れたアスファルトの香りがふわりと漂ってくる。


「私はこっち……なので反対方向ですね」

 先輩とは逆方向を指差しながら、「電車だと不便なのでタクシーを拾おうかなって思ってます」って言ったら、柳川(やながわ)が「俺、鳴宮(こいつ)と同じ方向なんで送って行きます」って言って。

「乗り合いしたほうがタクシー代も浮くんで」
 って取ってつけたように補足するの。

 柳川の家だって、方向こそ一緒だけれど、うちのアパートよりはかなり手前なのに。

「そっか。了解」

 人懐っこく八重歯を見せてへらりと笑ってから、そのさんが「なぁ柳川。鳴宮(なるみや)さん、フリーになったけぇって即行で送り狼にならんよーにね?」って手を振って。

「じゃ、お先」

 ってくるりと(きびす)を返して駅に向かって歩いて行くの。
< 98 / 173 >

この作品をシェア

pagetop