若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「カナトはいろいろなことを知っているのね」
「子どもの頃から父親に世界各地を連れまわされていたからね。海に接した国にはだいたい行ってるよ。マツリカだってたくさんの国の言葉を知っているじゃないか。すごいと思うよ」
「あたしのは日常生活で必要だったから自然と身についただけだよ」
「俺は船に乗るまでずっと日本で暮らしてたからいまだに他国の言語に苦手意識があるんだよね」
「カナトにも苦手なものがあるんだ」
「だから貴女に惹かれたのかもしれないな」

 ハゴロモで浩宇を保護したときのことを言っているのだろう。マツリカはそれくらいコンシェルジュとして当然のことです、と謙遜しつつも、心のなかでこっそり喜ぶ。

 ――完全無欠な王子さまに見えるカナトが、外国語苦手だなんて、意外。

 まだまだ彼の知らない部分がたくさんあるのだなとマツリカは痛感する。そして、父親につれられて旅行した思い出を懐かしそうに語る彼の横で、ひとつの可能性にたどり着く。

「! もしかして、それでシンガポールにも?」
「何か思い出せたかい?」
「ううん。でも、そんな気がしたの」
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