若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 だが、カナトはまだ社長になっていない。初恋を諦めることなく、いまもなお一途に追い求めている。このまま隠しておいてもきっと見つけられてしまうだろう。彼女のように。ならばいっそ、大人になった彼に託せばいい。
 それがクルーズを見守ってきた伊瀬の結論だった。

「――わたくしにできることは、以上です」

 サファイアがキラリと光るプラチナの指輪の内側には“Dear my festival flower”の文字が刻まれていた。
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