若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 塩辛いキスに襲われながら胸の頂を弄られ、マツリカのあたまのなかに星が舞う。カナトの初恋の相手は自分だった。それなのになぜ自分は頑なに彼との結婚を拒もうとしているのだろう。こんなにも身体は彼の手に馴染まされてしまったというのに。
 父親のことがなければ、素直に頷けただろう。十五年前の夏のように無邪気に。けれど、いまのマツリカは心の一部を凍らせたままでいる。その氷が溶けない限り、マツリカはカナトと一緒になれないと理解している。父親を裏切るような真似はできないという思い込みから、マツリカはカナトの求婚を退けようと必死になっていた。

「――ごめん、なさい」
「あやまらないで。俺にこんなふうにいやらしいことされているのに、たくさんキスされてるのに、イヤじゃないんだろう? それなのに、どうして結婚は無理だと考えているの? マイルがいるから?」
「マイくんは関係ないよ……っ」
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