若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 甘い悲鳴をあげるマツリカを見つめながら、カナトは愛撫を重ねていく。身体を撫でられながらキスを繰り返されて、快感で思考が麻痺していく。けれど、もっと気持ちよくなりたいと疼く下半身にはもどかしい尾鰭のような水着が絡まったまま。彼が彼女を解放するつもりはないらしい。

「じゃあ、結婚しよ……?」
「むり。だってカナトは……ぁん!」
「あのときのマツリカは素直に頷いてくれたのに。どうして俺を拒もうとするのかな?」
「だ、って」

 カナトの求婚には応えられないと、記憶を取り戻したマツリカはプールで口にした。
 それでも彼はマツリカを手放そうとしない。人魚姫は王子さまとの恋を叶えることなく泡になって消えてしまう運命なのに。

「俺は、ずっと貴女を探していたんだ。十五年前に求婚したときから。おとなになったら必ず貴女を花嫁にすると」
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