若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 立ち上がるのもやっとの彼女にかいがいしくクリスマスカラーのドレスを着せたカナトは、そのままマツリカをお姫様だっこしてヴィラから船が待つ港へ向けて準備をはじめる。
 荷造りくらい自分でできるとマツリカは抵抗したが、カナトはてきぱきと片付け、事後のベッドのシーツも無造作に丸めて洗濯するようルームサービスの人間に命じていた。この三日間、ヴィラにこもってふたりで何をしていたか一目瞭然だというのに恥ずかしがることもなくカナトは平然としている。

「俺がマツリカを求めていたのは周知の事実じゃないか。クリスマスにようやく想いが通じてひとつになれたことを、わからせてやればいいんだ」
「……しつこいよ」
「しつこくて結構。日本に戻ったら、結婚の報告をしよう。な」

 ハゴロモに戻ってからもベッドのうえで執拗に身体を求められ、マツリカはまどろみながら常夏の神秘の島、バリをあとにするのだった。
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