若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 マツリカの率直な応えに、カナトは顔を真っ赤にする。このまま下船しないで部屋に監禁したくなるような反応だったが、せっかく沖縄まで来たのだからとカナトは彼女を連れて船を降りていく。
 沖縄県那覇市にある那覇港。中核国際港湾に指定されている港則法上の特定港としても知られている。海外、国内と沖縄を結ぶ物流拠点として、多くのコンテナ船やハゴロモのような豪華客船、観光フェリーなどが軒を連ねており、その姿は圧巻だ。

「あ、あの船に、浩宇くんと家族が乗ってるのよね。この天気じゃ手を振っても見えないかな……」
「王氏はこのあとここから台湾に渡るからな。息子がマツリカによろしくって言ってたぞ」
「そっか、カナトは昨日ラウンジで浩宇くんのお父さんとおはなししてたものね」

 クリスマスイブ前夜の求婚以来、カナトは今まで以上に積極的にマツリカを求めるようになった。恋人役でも女避けでもない、正真正銘の恋人として、婚約者としてマツリカをいままで以上に甘やかし、独り占めした。
< 252 / 298 >

この作品をシェア

pagetop