若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 今日のマツリカは船上コンシェルジュとしての制服を身にまとったBPWの社員として、カナトの傍にいた。これはハゴロモを日乃から買い取った鳥海の若き海運王が乗船しているとの情報が日本のマスコミに漏れたためだ。お忍びといいながら彼はハワイで上大岡と接触しているし、船には台湾の王氏もいた。ほかにも彼の正体に気づいている人間がいてもおかしくなかったと仕方なさそうに彼は笑っている。

「ほんとうは一緒に下船してマツリカを俺の花嫁だって見せびらかしたいんだけど……まずはお互いの親を説得してからだ」
「気をつけてね」
「俺は大丈夫だよ。それよりマツリカ、貴女の方が心配だ。仕事をしている間はマイルの邪魔も入らないと思うが、くれぐれも」
「大丈夫よ。あたしはハゴロモでコンシェルジュの仕事に戻ってカナトが来るまで待ってるだけだもの。関係者じゃないマイくんが入ってくることはありえないわ。それに、瀬尾さんがついていてくれるんでしょう?」
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