若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 マイルによって身体を蝕まれていた義父も、病院療養によってずいぶん回復した。依存性のあるクスリの成分が抜けたことでいままで息子に許してきたことが会社にとってマイナスにしかなっていなかったことを悟った彼は、マツリカとカナトが結婚することには賛成してくれたが、自分が創設した会社の尻拭いをカナトにさせることを申し訳なく思っているようだ。だというのにカナトはマツリカと結婚できるのならそのくらい喜んですると言って義父をも黙らせてしまったのだった。

 一方、カナトの両親もまさか息子が十歳のときから結婚を決めていた女性を紹介してくるとは思ってもいなかったらしく、たいそう驚いた反応をしていた。ライバル会社キャッスルシーの社長が起こした事件については事前に伊瀬が説明してくれていたこともあり、深く問い詰められることもなく、マツリカはあっさりカナトとの結婚を認められた。どうやらマツリカのボスであるBPWの西島からもカナトの父親のもとへ「娘をヨロシク」という連絡が届いていたらしい。やはり彼はアメリカで働いていたマツリカを自分の娘のように思っていたのかとカナトとふたりで顔を見合わせて笑ったものだ。
< 285 / 298 >

この作品をシェア

pagetop