若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「それよりあのハゴロモに乗るんだろ? いいなぁ」
「ふふ、いいでしょ。マイくんももっと稼げるようになったら乗れるんじゃない?」
「む。親父の仕事を引き継いだばかりのオレにそういうことを言うのか」
「忙しいのはお父さんの仕事だけじゃなくてよけいなことにも手を出してるからでしょ」
「よけいなこととは失礼な。オレはお袋の遺志を継いでだな」
「あーはいはい。その辺のはなしはまた今度ね」
「んだよ。オレは本気でりいかと」
「じゃーねー」
「あ、こらっ、りいかっ!」

 義弟の言うことを無視して容赦なく国際電話を切って、マツリカははぁと息をつく。
 父親に会いに行くのは構わないのだが、この義理の弟という存在が厄介きわまりない。

 ――マイくんはまだお母さんが言っていたこと気に病んでいるのかな。バパのこと。
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