若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
「たまたまにしてはできすぎな気がするのです。杞憂に終わればいいんですけど」

 幼い頃のカナトを知る伊瀬は彼がシンガポールでマツリカを見初めたことも当然知っている。
 このことは父も知っていたはずだが、その後に起きたケミカルタンカー事故によって有耶無耶にされてしまった。

「キャッスルシーの運営は城崎浬が引き継いだんだってな。もし彼女とアイツがデキているとすれば……考えたくもないけど……」

 中谷真理香にマツリカの所在を知らされたとき、すでに結婚してしまったのだとカナトは絶望していた。
 だが、彼女の身元を調べていくにつれて、それが両親の再婚によるものだとわかり、安心したのだ。
 とはいえ彼女には同い年の血のつながりを持たない義弟がいる。カナトの高専時代の後輩でもあった城崎浬だ。彼に義理の姉がいるというはなしは聞いたこともなかった。もしかしたら隠していたのかもしれない。血のつながりを持たない義理の姉弟同士が恋愛関係に陥り結婚にいたっている可能性だってあるのだから。そのことを確認したところで、もはやどうにもならないが。
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