若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
   * * *

「あの、これ落ちてましたよ」
「あ! ありがとうございます」

 ロサンジェルス国際空港に到着し、無事にキャリーバッグを回収したマツリカはホテル直通のシャトルバスに乗るため停留所で待っていた。その際にタイムテーブルが記された書類を飛行機のなかで隣の席に座っていた青年に声をかけられる。「危なかった」と思わず日本語で呟いたら青年が「日本語上手ですね」と嬉しそうに微笑む。

「LAにはお仕事で?」
「貴女もですか?」

 思わず同時に質問してしまい、苦笑する。久々に会社の外で母国語をはなせるひとを見つけられて、興奮してしまったのだとマツリカが告げれば、それは光栄ですと青年が笑う。

「ビジネスクラスに乗っている時点でわかりますよね? 明日も朝早いんですよ」
「お互い様ですね。同じホテルみたいだし」

 夜も遅いため、シャトルバスに乗る客の数はふだんより少なかった。
 マツリカは青年の隣に座り、ぽつぽつと語りだす。

「明日からおおきな仕事が入ってるんです。それで、ちょっと緊張しちゃって」
「そうなんだ。俺は今日NYで商談を終えてようやく落ち着いたところ」
< 55 / 298 >

この作品をシェア

pagetop