例え、キミとの時間が夢だったとしても
気がつくと唯衣は、知らない土地に辿り着いていた。一面に広がるお花畑。そして、雲一つない綺麗な青空。誰もが息を呑むほどの絶景だ。こんなに美しい場所が近くにあったなんて知らなかった。美しい景色に唯衣は暫く見とれていた。綺麗な景色を見ていたら、心が浄化され、さっきまで母親に苛立ちを覚えていたことなんて忘れてしまった。(早く帰ってお母さんに謝ろう。)そう思った唯衣は家までの道をスマホで検索しようとした。しかし、咄嗟に家を飛び出した唯衣はスマホを持っていないことに気がついた。(こうなったら誰かに聞くしかない。)そう思った唯衣は誰か話しかけられそうな人がいないかあたりを見回した。しかし、周りはおじいちゃんやおばあちゃんばかりで話しかけられそうにない。暫く歩いていると川の近くに座っている同い年ぐらいの美少年を見つけた。(あの子に聞こう。)そう決心した唯衣は美少年に尋ねた。
「すいません。葵町《あおいまち》に行きたいんですけど、どう行けばいいかわかりますか?」
「あー、ここからはかなり距離があるよ。そんなにすぐ行ける場所じゃない。」
「え、そうなんですか!?」(私、家を飛び出して、ちょっと走ってきただけなはずなんだけど…。)「星町までどれぐらいかかりますか?」
「まぁ、案内するから気長に行こうよ。」
「え、ほんとですか!?ありがとうございます。よろしくお願いします。」(親切な人に出会えて良かったー。これで一安心できる。でも、何だか親切にしてもらいすぎて申し訳ないな…。)そんなことを思っている私をよそに、美少年は迷うことなくスタスタと歩き出した。
「キミ、名前何?」
「尾関唯衣です。」
「へぇー、唯衣って言うんだ。俺は、天池ひかる。よろしく!」
「よろしくお願いします。」
「見た感じ、同い年ぐらいだよね?何歳?」
「15歳の中3です。」
「あー、やっぱ一緒だ!こんなところに同級生がいるなんてなんか嬉しいな。ここに同じ世代の人がいるの珍しいんだよね。」
「え、そうなんですか!?」(確かに、さっきからおじいちゃんやおばあちゃんばかりで同じ世代の人はいない気がするな…。高齢化が進んだ地域なのかな?それとも、ここは、おじいちゃんやおばあちゃんが好むスポットなのかな?)あれこれ考えているうちにもひかるはどんどん進んでいく。
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